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春の改札口

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私が社会人になりたての春、駅の改札で見かけた印象的な出来事。
どうやらこれからどこかへ行くらしい、きちんとした身なりのお母さんと、
改札を挟んで手前には冊にしがみついて「ママ〜!!」と泣叫ぶ
2〜3歳くらいの男の子、そばにはおばあちゃんらしき人がいる。
子供の泣き様はすごくて、今生の別れかと、みなが振り返るほど。
このときまだ十代だった私はこのお母さんを見て、自分だったらとは考えず、
私の母だったら周りを気にして苦笑しながら出かけていくだろうと思いました。
でもこのお母さんはそれはそれは恐い顔をして、一言も発せず、
距離を置いて棒のように立ち尽くし、
しばらく泣きわめくわが子を見ていましたがそのうちプイと
踵をかえしてホームへの階段を降りていってしまいました。
おばあちゃんに、「よろしくね」の一言もなく。




職場でそんな話をすると、同期の男性が
「そりゃあお母さんつめたいなあ」 と言い、
私もそう思ったのでした。


今朝、私は本当は5時に起きるところを寝坊して7時になり、
子供が目をさましてしまって、仕事に行こうとするわたしにすがりつきました。
「ママ、ネンネ〜!!」と泣きわめき、そのうるさいこと。
朝方帰って寝たばかりのパパが目をさまし、なだめてくれるかと思いきや
「うるさいんだよ!」
玄関まで追っかけてきて私の足にすがりつく子をむりやり 引き剥がし、
ほとんど突き飛ばすように玄関に置き去りにして
ばたんと非情にドアを閉めました。

このとき、あの駅でのお母さんを思い出し、
今の自分もあの人と同じくらい恐い顔をしているに違いないと思ったのです。
今思えば、あの日、あのお母さんは初出勤だったのかもしれないですね。
こどもはかわいい、仕事はしたい、しなきゃならない。
しかしこれ程泣きわめくのをふりきってやるほどの仕事だろうか、
なんて考えていたのかもしれません。
だから恐い顔にみえたのでしょうね。
冷たいどころか、子供がかわいくてならないから、ああなっていたんだなと
親になって初めて読み解くことのできる情景でした。

さて、ドアを閉めてから耳をすまして中の様子をうかがうと、
子供はすぐ泣き止んでトタトタとパパのところへかけていった様です。
パパがなだめている優しい声をかすかに聞き、 やっと安心して私は出かけました。
by s-rosette | 2004-10-10 23:40 | 子育て
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